逍遥録 -衒学城奇譚- -7ページ目

ギャビン・ライアル著 『深夜プラス1』

マガンハルトという男をリヒテンシュタインまで送る仕事を引き受けたカントン。

彼は所有する会社の買収問題に巻きこまれており、何としてでも期日までに到着しなければなりません。

マガンハルトを狙って刺客が送りこまれ、警察もまた彼を追っている中、かつてレジスタンス運動の闘士だったカントンと、アル中のガンマンハーヴェイは、マガンハルトと彼の秘書を護衛しつつ、リヒテンシュタインへむかいます。


* * *


カントン(戦時の通り名)がよい。

かつてレジスタンスの闘志であったカントンですが、今はもうロォトルと云われてもおかしくない世代(……だと思う)。

彼はいまだに平穏な生活になじむことができず、旧友のアンリから依頼されてこのようなヤバい仕事を引き受けます。

その言動は、常に自分の経験と規律から得たものであり、非常に重い。

護衛の対象のマガンハルトが何と云おうと、決して自分を曲げるコトがない。


欧州指折りのガンマンであるハーヴェイは、アル中に苦しみつつ、自分の仕事を全うしようとします。

マガンハルトもまた彼の人生を台無しにしかねないこのワナに、怯えつつも立ち向かおうとする。

相手は警察と、マガンハルトを排除しようとする謎の人物に雇われたプロ。

そのぎりぎりの危うさ、非情さ。

物語全体がおさえられた情緒で彩られ、人の死も、彼らが法を曲げてでも前に進む様子が淡々と、しかし端的にはっとするような鋭さを以って描かれています。

かつてのフランス映画なんかで見られるような色合いですね。

映像技術が進化しただけで内容が退化のきわみをみせる、今の腐れたハリウッド映画なんかじゃ、絶対にムリだね。

カントンが(ある程度は)若いハンサムで、学芸会みたいな銃撃戦のはてに、秘書とくっついちゃう程度のハナシになっちゃう。

映画になってるかもしんないけど(調べてないけどさ)、イチオー云ってみる。


* * *


評価*★★★★★


傑作。

古いハナシだから、ネタはおおむね想像できるけど、それでも読ませてしまう。

何度でも読みかえしたくなる。

みんな、オラといっしょにいんへるのさ往くだ

芳乃さんと小十郎君が、いんふるえんざにかかった。

よりによって連休に、芳乃さんは前の晩から、小十郎は朝起きてから急に関節が痛いって云いだして、まぁこりゃアレだなって思って、当番医に行ったんだけどさ、いや、すんげえんだ。

開院時間直後に行ったんだけど、もう駐車場いっぱいでさ、病院の前の路上までぎっしり。

おまけにいんふるえんざの恐れがあるヒトは、車の中で待っとくように指示される。

順番がきたら、先生が車までやってきて診察するって寸法。

まるで野戦病院かドライブスルゥだよ。


診察まで2時間、薬もらうまで1時間、計3時間。

診断結果はA型、俗に云う新型だ。

流行にうといくせに、んなもんに罹んなよ、まったく。

家長に感染すんじゃねぇぞ。

ホントにココぞとばかりに休むからな。


ちなみにタイトルはまったく意味がない。

わかるヒトいるのか、このネタ。


岩となる愚鈍さ

怒っている。

20日の早朝、「中小企業金融円滑化法案」が与党多数で強行採決されたことについて、すんごく怒っている。

非常に残念だ。

なぜそんなマネをするのだろう……?

コレじゃあかつての自公政権と同じじゃないか。


庶民の多くが、なぜ先の選挙で民主党に投票したのか、よく考えてみてほしい。

閉塞した世の中で、自公のやり方では自分たちは幸せになれないと感じたからです。

どうやらこの与党は、自分たちのコトなどコレっぽっちも考えていないらしい……そう思ったからこそ、国民の多くは政権交代を望んだのです。

自公がこれまでできなかった政治をして、少しでも自分たちの住んでる国をよくしてもらいたいのです。

だからこそ、今の民主党を中心とした政権ができたのです。

その結果は、少しづつですがボクらの眼に見える形ですすんでいます。


だからこそ、自公がしたからといって、理にかなっていないおこないはしてはいけないし、、自分たちもやられたからやり返す――そんな考え方ではダメです。

与党となった以上、強行採決は絶対にしてはいけないことだと思います。


民主党の一番の強みは、自公とは違う――とみんなが思っているコトです。

庶民の眼からみて非道だった自公と同じ行為を、民主党がしてどうする?

見捨てられてしまうよ。

所詮は自公と同じだなぁ……って。

そうなったら行き着くトコロは凋落です。


確かに議論など別に民主主義でも何でもなければ、最良の解決方法でもありません。

多数決というシステムである以上、多数が勝ち、少数が敗けるのは当然です。

確かにそりゃ楽ですよ。

だからと云って、多数や強者が、少数や弱者の意見や異論を排除するコトは、してはならないコトだと思います。


20日の審議については慎重な対応がなされているようです。

これに対して自公は欠席をしています。

彼らが欠席をするのは自由ですが、民主はコレ幸いと野党である自公を無視してハナシをすすめてはいけないと思うのです。

相手が逃げた――なんて野党の責任にしてはいけません。

野党の意見を聞くのは、与党である者の義務であるし、その努力は常にされねばなりません。


政権にある者は、謙虚でなければなりません。

軽薄に、安きに、小賢しさに流れてはいけません。

おごり高ぶって舞い上がってもいけません。

自分たちの持つ権力は貸与されたモノだと、忘れてはいけません。

権力を持ちながら、常に忍従が求められます。

それは平坦でもなく、険しい道なのです。

だからこそ、岩のように、決して揺らがず、何者をも受け止める強さを持たなければいけないのだと思います。


今の民主党に必要なのは、岩となる愚鈍さではないでしょうか。

野村美月著 “文学少女”シリィズ

文芸部部長天野遠子。

物語を食べちゃうぐらい愛している、この自称“文学少女”に、後輩の井上心葉はふりまわされっぱなし。

心葉は実は中学時代に初めて書いた小説が、社会現象をおこすぐらいの大ヒットし、そのせいで大事な幼なじみを失ってしまい、それ以来小説など書かないと心に決め、平凡で目立たない人生をおくろうとしています。

遠子は心葉をムリヤリ文芸部に入れて、毎日三題噺を書かせ、それを“食べて”しまうのです。

ですがそんな彼女にも思惑があって……

そして遠子先輩も心葉も、そしてその周りの少年少女たちもまた、とんでもなく心に秘密を抱えて生きてる。

次々と彼女たちが直面する謎を、遠子はその物語を“想像”することによって、解決をしていくのです。

このシリィズは、遠子と心葉、彼女たちをとりまく物語。


* * *


え~と……またかよってカンジですが、らのべです。

全部で本編6話、挿話集と特別編が一冊づつで、番外編1話を読了。

萌要素満載です。

ツンデレが出ます。

ぺったんこもいます。

お嬢様もいます。

松葉杖の少女も出ます。

強烈です。

熱出そうです。


『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』

人間のココロがわからない孤独な“お化け”の物語。

そこそこ。

1作目だから、まぁこんなもんだろって作品。


『“文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト)』

死んでる少女から文芸部のポストへ、謎の暗号が届く。

う~ん、何かあんまり印象ないや(ヒデェ)。


『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』

心葉や遠子先輩たちが学園祭で劇をやります……ってハナシだっけ?


『“文学少女”と穢名の天使(アンジュ)』

心葉に片想いしてる琴吹さんの友人が失踪し、心葉たちが行方を追います。

……コレも何となく印象が薄い。

でもこのあたりから、徐々に心葉君の物語へと移っていきます。


『“文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ)』

心葉が書いた小説のために死んでいたはずの美羽が生きていた。

彼女のためにすべてを擲とうとするが、美羽と心葉を中心として、様々な絆が歪みはじめます。

心葉の心の傷があらわとなる作品です。

非常によろしい。


『“文学少女”と神に臨む作家(ロマンシエ)』(上・下)

本編最終作。

遠子先輩の秘密を心葉は知ることになります。

同時に彼女がなぜ心葉に物語を描かせたのかも……

遠子と心葉の別れ。

傑作。

物語の結末はこうでなくっちゃと想わせる一作。


『“文学少女”と月花を孕く水妖(ウンディーネ)』

特別編。

遠子先輩のヌゥドを狙う麻貴の別荘に2人が招かれた時、80年前の惨劇の幕が再び上がります。

その後の物語の変容を暗示するかのような転機的な物語。


『“文学少女”と恋する挿話集(エピソード)』

短編。

ソノラマ時代の嵩峰龍二だったか、「番外編はあのころ実はこんなハナシもあったんですよ~って後ろ向きなのは性に合わん。未来への布石的なモノでなくてはイカン」とか云ってまして、ボクも大体そーゆー派です。

だけど、こーゆーは箸休め的なのも、悪くはない。


『“文学少女”見習いの初戀』

外伝。

遠子先輩が去った文芸部に、心葉目当ての日坂菜乃が入部します……

まぁ何ちゅうか、かーいらしいハナシやね。


以上、簡単な紹介でした。

ぜぇぜぇ……


さて……

心葉の葛藤は、全編を通じての物語の主幹を為しています。

絶対に小説を書かないと誓った心葉ですが、遠子先輩におハナシを書くことを強制される日々に、何となく怠惰な安心感なんか感じちゃってさ。

でもその時間はやがて失せる。

元々は文芸部の「恋の相談ポスト」に届けられた恋を成就させるとか、そーゆーしょーもないノリだったのですが、やがて心葉自身の物語、遠子自身の物語へと変貌していくにつれ、急速に緊張が高まっていきます。


それぞれの巻は文学の名作がモチィフとなっており、全体で徐々に心葉や遠子先輩たちが成長していきます。

登場人物の成長、物語では重要だと思うのですよ。

コレがないと、間のぬけたハナシになってしまう(あえてしないってのなら別によろしいが)。

売れりゃそのままのんべんだらりと、つづけていく作品が多いですが、ボクはそんなのオモシロク感じません。

完結させるコトを目的としない物語なんて、ある意味自己満足でしかないし、甘えですわ。

登場人物だって、会話もすりゃ思考もするんだから。

まぁその心葉君や遠子先輩たちの成長ってぇか、悩んだり苦しんだりするのが、自分とくらべてみると(今の自分はもちろん、当時のも含めて)実に清々しいって云うか、ピュアって云うか、輝ける未来があったりとか……とにかく自分はドスドスドス黒かったんだなあって、大変ホッといたします(何じゃそりゃ)。


評価:★★★★★


らのべがどーちゃらとかじゃなくって、コレは傑作だと思う。

すごく丁寧に描かれた物語。

作者の性格だろうか……?

ただしコレを30代のオッサン(妻子あり)が読んでるのは、どーだって思う。

むしろ芳乃さんの友人の子ども(小2)あたりがそろそろ読みはじめてもおかしくなさそう。

騙されたと思って、いや別に騙すつもりはないけど、え~歳こいてるけど、この表紙の文庫をレジ(かーいーオンナノコがいる)に持ってける度胸のあるヒトは、読んでみても損はないと思う。

自己責任で。

酒見賢一著 『陋巷に在り』

数千人もいた孔子の弟子の中で、師の教えを真に理解していたのは、顔回ひとりと云われています。

本書では、聡明で、貧民たちの中に在り栄達を望まない顔回が、実は師の政敵や魑魅魍魎、一族の敵と闘う強い呪力の持ち主として描かれています。


* * *


前から一度読みたかった酒見賢一の『陋巷に在り』ですが、ブック○フで全巻そろいを100円こーなーで見つけて一気読み。

……全13巻の内容を要約するとこんなカンジですが、う~ん……


主人公は一応顔回ですが、このヒト結構出てこない。

孔子がほとんど出すっぱりだったりとか。

古代の偉大なる思想家孔子が、これでもかってぐらい強烈に存在をあっぴ~るするのさ。

物語の主題は孔子が人生の後半期に、ようやく魯国に職を得、改革を断行しようとするものの、既存の旧勢力にはばまれ、放浪の旅に出立するまでの数年間が描かれたものですので、やはりどちらかというと、孔子が主体ってカンジ。

顔回はたま~に出てきて、まぁ何ちゅうか無敵っぽい力で、何となく敵のワナを蹴散らすっつーか、無効化するっつーか……非常にご都合主義ってか、しかしそうでないってか、とにかく説明しづらい。


このハナシのですよ、どうにもぴたりとこないのは、強さ、力の基準がわからないってコト。

敵方にはつよい呪力を持った悪役がいて、古い呪術を集めようとして、孔子を狙う悪役や、中には男を蕩かすだけでなく素手でヒトをひきちぎるような子蓉ってオンナがいたり。

対する孔子や顔回側には顔回の一族がいて、これも古くからの強い呪術を使う一族だけど、何でそんなしょぼくれた術をやってんだかよくわかんない。

確かに呪術の体系ってヤツあるんだろうけどね……その“力”が何に起因するのかが、よくわからない。

顔回なんて黄泉の国にまで行ってんのにだよ。

作者もそのあたりは、微にいり細にいり、古代の中国の呪力について懸命に説明してるんだけど、イマイチわからない。

だもんで結局「え、何でそんなコトできんの?」「は、そーゆーのあり?」「何で敵方の術ばかりが有効になんの?あ、ほらまた死んだ」とかゆー状態になる。

だから顔回の力が、この物語世界のどういった基準にあてはまるのかがはっきりとわからない。

このあたりは、伝奇モノのむずかしさとも云えるのではないでしょうか。


しかしまぁ、文句ばかり云ったが、なかなかに濃厚なハナシでした。

連載10年、全13巻という長編でありながら、主要の登場人物はさほど多くはなく(後半に入ってからはほとんど増えてない)、それゆえひとりひとりがこってりと描写されています。

特に孔子が魯国の既存勢力を抑えこむために弄した策について、実に脂っこく描かれていて、生唾モノですわ(何を云ってる)。

子蓉のコトとかは、何となくあまり興味ない。


評価:★★★★☆


最期付近で妤(顔回の彼女←そうか?)と顔回との関係ですが、ボクはあーじゃなくてもよいのではないかなと思いました。

しかしボクの感覚でいけば、やはり長すぎる。

3分の2でいいかなぁ……


ちなみに表紙は諸星大二郎。

わはははは。

ダブルチィズバァガァ

すんごく珍しいハナシだけど、『交渉人』ってドラマ、観た。

主役は米倉ナントカってヒトで、陣内孝則が出てたなぁ。

ハナシはまぁテレビのドラマだから、あんなもんだろうと思うが、ただ母子家庭のお母さんが、裕福な家庭のコに、問い詰める場面があったのは、印象にのこりました。


コドモの替え玉テストの取引条件として、ゲェム?サッカァボォル?と問い詰める母親に、少年は「ダブルチィズバァガァ」と応えたのです。


彼女は頭をかきむしって狂乱します。

そんなもののために犯罪者となったのですから。


* * *


内容はどーでもよいが、ソコんトコだけはエンドレスで観て見たい気分です、はい。

産みの苦しみ

本日、政府は前自公与党がデタラメに積み上げた補正予算を精査した結果、およそ14兆6000億円のうち2兆5000億円を執行停止するコトを決定した模様です。

民主が政権をとって、およそ3週間たちました。

この間、すでにいくつかの公共事業の停止や、追加雇用対策の決定、公立高校無償化を間接給付方式でおこなうなどの方針を表明しており、インド洋沖での給油の中止や核兵器縮小、二酸化炭素排出量の大幅削減などの外交的な目標もかかげています。

外交的には世界の流れに民主の考えがわりあい、うまいコトかみ合った印象です。

国内的には今までの自公与党の政策による行きづまりから、少しずつですが、大きく舵を切りつつあるのを感じます。

個々の方針に対して、もちろん是非はありますが、わずか3週間で、ある程度眼に見える形で示せたのは、予想以上だと思います。

しかし不安材料も多い。

株価は低迷をしていますし、二酸化炭素の削減量も非常に大きな負担です。

閣内での意見の不統一もみられますし、公共事業の凍結による反発もスゴイ。

何より予算の不足は大きく、ついに選挙前はしないと約束していた赤字国債を発行するようです。

ボクとしては赤字国債ナシに政策をすすめるコトは、とうてい困難だと思っておりますので、当然の判断だと思います。

ただ将来的な負担が大きくなるのは、落胆せざるをえません。

選挙前は発行しないと云っているので、キチンと説明をし、その上で「日本再建のために必要だから、お願いしたい」と語りかけるコトが必要だと思う。

そうしなければ、庶民の支持はすぐに離れていってしまうでしょう。


さらに財源のムダを省くってのも、当初にくらべてかなり少ないのは事実です。

しかし本来14兆円以上のうち、2.5兆円、およそ6分の1を浮かせるコトができたのは、とんでもなく大きな成果だと思います。

2万5000円じゃないんだよ、2兆5000億円だよ。

ゼロから、それだけ捻出できたんだよ。

自公与党にできるかい、ソレ?

確かに当初の予定にくらべて、自由に使えるお金は少ないようです。

コレを公約違反って云うのは簡単ですが、ソレはソレで仕方ないと、ボクは思います。

ないもんはない――それでよいのだ。

あるならある分だけ、やればいい。

子ども手当てだって、2年や3年遅れたって、段階的だってかまわないと思います。

高速道路の無料化だって、数年後をメドだっていいじゃないか。

いや、無料化じゃなくって、大幅値下げでもよいと思う。

バラマキ的な政策はボクらの負担を大きくするだけです。

もっと全体を精査した上で、可能な事業、せねばならぬ事業をしぼりこんでいく必要があると思います。

今あるお金で、今できるコトをやりゃあ、ソレでいいじゃないか。

民主が最初にやったのは、官僚の発言力を削るコトでした。

一見遅速に感じますが、自分たちの政策に口を出そうとする勢力を抑えこむコトは、コレから必要です。

システムを変えずに、理念だけ叫んでもダメなのです。

しかし、ソレが民主の政策から速効性をうばっているのも事実です。

雇用対策や景気対策は、スピィドが重視されます。

ソチラにばかりかまけて、対処が遅れては本末転倒です。

むずかしいとは思いますが、行政改革と併行してそういった喫緊の対策もすべきだと思います。

庶民が今回の選挙で民主に託したのは、自公与党がダメにした日本の再生だ。

こーゆーコトやりますって方針を、見せてくれればまずはいいと思います。

なぜならコレまでの負の遺産がデカすぎるのです。

正直キツイと思います。

フタをあけてみりゃ、自公与党によってボロボロに喰い荒らされた財政状況。

何十年もかけて積み上げられた宿題を片付けるのです。

ため息が出るよ。

でも逃げるワケにはいかねぇわな。

試行錯誤の繰り返しです。

問題にブチ当たるたびに、後退したり、足踏みしたり、方針を転換したり、臨機応変に対処していかなけりゃならない。

もうほとんど現場合わせの状況ですよ。

コレまでも何度も云ってきましたが、政権交代したからって、急にバラ色の未来がひらけてるワケじゃない。

むしろ苦難のはじまりだと思います。

少なくとも、自分はそのつもりで投票をしたし、ボクの周囲にいたヒトたちは、若者から年配者までみんな感じていました。

今は産みの苦しみの時期ではないかと思います。

さてさて、ところでしかしまぁ……民主党って単語を眼にしただけで火病にかかる傾向のある、ある特定の病状の持ち主の方々は、やほうの記事のコメント欄なんぞで、トランス状態におちいって必死こいて罵倒しているようですが、ま、どーでもええわ。

あーゆーのを見ると、自称情報強者ってヤツの、向こう側が透けて透けて見えるぐらいの浅薄さが、よくわかりますね。

キンバリー・ウェザースプーン&アンドリュー・フリードマン編 『天才シェフ危機一髪』

世界的高名なシェフ40人の、失敗談を集めた一冊。

大事なぱーちーに出すロブスタァが痛んでいたりとか、転職した環境がむっちゃ劣悪だったりとか、運んでいたソォスを車の中にブチまけたりとか、総料理長に昇格したが給仕スタッフが反抗的だったりとか、天才的なシェフの下でのニュウイヤパァティでの悲惨なできごととか。

とにかく、そんなぶっちゃけバナシである。


* * *


こーゆーバカ々々しいハナシは、大好物である。

おかわりしたいぐらいだ。

ただ残念なのは、一流シェフたちがその地位に昇りつめた時におきたトラブルを、経験やとっさの機知や発想で切りぬけたってハナシじゃなくって、若い日の憶い出バナシがどうしても多かったってコトだ。

コレじゃ『天才シェフ危機一髪』じゃなくって『ただのシェフやら未熟な見習いやらの、た~だの失敗談』ってコトになりかねない。

ハナシ全体は料理界のネタだから、むっちゃおもしろいのではあります。


こーゆーハナシなら読んでて楽しいのだけど、基本的にボクはつくづく他人の苦労バナシや失敗自慢が、嫌いです(まー別に好きなヤツァいねえだろうが)。

大体ね~酒の席に多いよ。

やたらしつこく自分の失敗自慢をするオッサン。

未熟な時代の失敗なんて、あって当たリ前なのですよ。

若さにかまけた失敗なんて、大体において自身が解決できるのではなく、上司や責任者がその責任をとるものなのだ。

実際は自分で解決できる例なんて、ほとんどないと思います。

だから結局ソイツの若き日の失敗で汗をかいたのは、大体周囲であって、しょせんは「オレの若いころは、こんなドジをしでかしたんだぞ」ってゆー失敗自慢にすぎないのです。

しかも「オレはそれを乗り越えて今があるんだ、オレはスゴイんだ」ってゆー自慢が言葉の裏ッ側に透けているワケよ。

そんな価値もないくせにね。

しかもそーゆーヤツに限って、肥やしになってないの。


だからボクはコームインと酒呑むの、ヤなの。


* * *


評価:★★★★☆


何も考えずに、他人の失敗をおかしく楽しみたいなら、ぜひどうぞ。

少なくとも将来料理人になろうってヒトが読んでも、さほど参考にはならないと思う、うん。

おまいら、とりあえず落ち着け

平成21年9月16日という日は、日本の政治史でひとつの記念日として記憶されるかもしれませんね。

いわゆる55年体制が確立されてから今日まで、わずかな時期をのぞいて、初めて本格的な政権交代が実現した日です。

自公与党による政権が、国民の多くから否定をされ、鳩山由紀夫氏が首相に選出され、民主党を中心(つーかほぼ単独)の政権が樹立されたのです。

これまで自公(こー云わざるをえないのは、ここ10年ほどの政治の悪弊だなぁ……)与党を中心に廻っていた日本の政治は、このわずかな期間で民主を中心に急速に変化をとげたようです。

もちろん民主が政権をとったからと云って、急激に世の中がよくなるワケでもなければ、悪くなるワケでもありません。

すべてが180度ひっくり返るワケでもなく、パラダイスがおとずれるワケでもなく、地獄がおとずれるワケでもない。


ただボクなんかが見てさえ、民主の政権はまだまだ課題が多いと思います。

特に高速道路の無料化なんて、とんでもないハナシだ。

確かに今の(通常の)料金は高すぎるし、かと云って自公のように週末のみ自家用車両で、しかもETC搭載車だけが1000円などと、不公平で大迷惑なバラ撒きなどもっての他です。

しかし無料はおかしい。

建造費すら出ない運営でどうするのだ。

ボクは現状の半額か3分の1程度にして、利用しやすくかつ多少なりとも収益があるような方向性ですすめてはどうかと思うのですが……

また環境のハナシにしても、かなり困難な目標を課題にしているようですし、官僚を敵対の勢力の図式に当てはめて支持を得ようとするのにも、抵抗を感じます。

外交問題にしても、まだまだ評価できるだけの実績はありません。


ボクらは民主政権に、白紙委任状をわたしたワケではありません。

とりあえず、今のこの国の現状を打破する手段として民主党を選択したのです。

要するに、コレからの数年、民主がやる仕事はドブさらいだ。

コレまでの日本の膿を、膝をついて両手でもってかき出す作業。

彼らの政策が庶民のためにならなければ、批判しなければなりません。

当たり前です。

それは自公だろうと、民主だろうとまったく同じなのです。


何より民主支持者、自民嫌いの人々にこそ、民主政権になったからと云って、バラ色の未来など来ないと思ってもらわなければいけないと思う。

むしろ負担は大きくなると覚悟すべきです。

負担増なしで、今の苦境を切り抜けられるとは思えませんし、将来にツケをのこせないと考えるのなら、どこかで決断しなければならない時があるはずです(無論、明確な将来像は不可欠ですが)。

それは自公政権下では、絶対不可能です。

なぜなら、そういった覚悟や庶民への誠実な問いかけを怠りつづけてきたのが自公政権であって、これまでできなかったものが、これからもできるはずはありません。

政権交代をして今こそ、そういった澱を一掃するチャンスとも云えるでしょう。

春を迎えるためには、冬を越さなければいけないのです。

そのためには、ボクらがまず覚悟を決めるべきですし、容易に投げ出さない、安易に流れないコトが必要だと思います。

それはすんごく大変なコト。

誰だって変化はイヤだし不安だ。

でも海外では今回の選挙のコト、「冷戦時代の古いシステムが、10数年遅れで日本では今ようやく終わった」ととらえているムキもあります。

つまりコレまでの日本の政治が停滞していたのであって、世界はとっくにシフトチェンジしているワケ。

そんな中でただただ安寧してるからって、古いシステムにしがみついていて、これから日本はホントに生きのこっていけるのだろうか?


しかしまぁ、先の衆院選からおよそ2週間、ほんでもってこの度鳩山内閣が樹立されるまでの間に、メディアやネットでよくぞこれまで見当ハズレな見解(というレベルのモノがあったか、特にネット?)が垂れ流されるもんだと、呆れ……もとい感心しております。

たとえば小沢二重権力への批判、鳩山代表の反米的(?)主張への批判、高速無料化への疑問、脱官僚などのマニフェストへの実効性、財源の不透明さ。

組閣の段階になっては、内定情報の漏洩による情報管理、混乱する情報、福島議員や亀井議員の入閣など……

メディアは「できなかったらどうするか」「失敗したら誰が責任をとるんだ」とかそんなハナシばっかりで、政策を実行すべき与党に対する批判を強めるのは当然じゃありますが、どうもマイナスな思考に陥りがちだよなぁ……

アレじゃあ小姑だよ。

はじまったばかり、それどころかはじまる前から批判してどうする?

民主政権は今はじまったばかりで、これから実績を重ねていくのですよ。

実績もない段階で批判も支持もできないでしょう?


ことに滑稽なのは、民主政権を気に入らない人々の「売国奴」「反日」などのほとんど狂気に近い罵倒。

そんでもって「民主政権は日本を中共に売り渡す!」「韓国に操られている!」「日本終了ー!」などと、カルト雑誌レベルの都市伝説を“真実”と思いこんでいる世間知らず。

自分たちの的外れな判断基準が、完全無欠の“真実”と自信満々な夜郎自大っぷり。

実績を重ね、ソレがボクらのためにならなかったら批判すべきであって、“政権”として批判も評価もできない段階で、ただ「キライ、ニクイ」って感情だけで脊髄反射のごとく、民主政権がとなった途端、日本が破滅するかのようにわめきたてても、愚の骨頂以前の問題です。

やれやれ。

ネットの中の“真実”とやらが、世の中の“現実”ではなかったコトにガッカリしているのはわかりますが……


でもね……

とりあえず君たち、落ち着けと云いたい。

メシ喰って冷静になれ、落ち着け、深呼吸をしろ。

そして観察しろ、注目しろ。

ハナシはそれからだ。

「子ども手当」家計への影響 損得、120万円の差

「子ども手当」家計への影響 損得、120万円の差

9月5日7時57分配信 産経新聞


東レ経営研究所が4日、民主党政権の「子ども手当」の家計への影響について試算し、最も得をするのは「共働きで年収300万円、中学生2人と小学6年以下の1人の子供がいる世帯」で、年79・2万円のプラスになった。逆に、「妻が専業主婦で年収1500万円、高校生(または大学生)3人の子供がいる世帯」は最も負担が増え、年41・5万円のマイナスで、約120万円もの差が出た。

 民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた「子ども手当」は、中学生以下の子供に年間31万2千円を支給する。ただ、児童手当や扶養控除が廃止されるため、世帯によって「損得」が顕著になる。

 研究所は妻の就労や世帯年収、子供の数・年齢などを組み合わせ、520ケースを試算した。

 専業主婦世帯は、子供が高校生以上の場合、扶養控除がなくなる分が年収に関係なく負担増になる。

 3歳未満の子供がいる世帯では、年収900万円が年収800万円よりも得になる逆転もあった。

 増収になる中学生以下の子供のいる世帯でも、「中学生」「3歳から小学生」「3歳未満」の順に恩恵が少なくなるという。


* * *


日本人の平均収入が400万円で、コームインは600万円とか700万円とかもらってるとか云って(この金額は明らかなウソである。いつか時間があったら、じっくりと記事にしてみたいものだ)、やたらコームイン攻撃をしていたくせに、「妻が専業主婦で年収1500万円、高校生(または大学生)3人の子供がいる世帯」とか「3歳未満の子供がいる世帯では、年収900万円が年収800万円よりも得になる」などと、夢物語みたいな世帯をモデルケェスにしているあたり、この検証自体がまるでデタラメであるコトを実証しているようなモノである。


何らかの政策によりワリをくう人間がいれば、得をする人間もいる。

可能なかぎり不公平にならないようにするのは当然だが、すべてのヒトに得になるなんてありえない。

むしろ「共働きで年収300万円、中学生2人と小学6年以下の1人の子供がいる世帯」のようなヒトたちが、何とか報われるような社会のシステムが必要ではないでしょうか?

これまでの政権は、もっとえげつないカタチで不公平だったのですよ。

それをこんな夢物語での格差を全面に押し出して、民主党の政策を不公平と庶民に刷り込もうとするあたり、ほとんど悔しまぎれとしか思えません。


さすが衆院選直後に、「ミンスの思い通りにはさせない!」と豪語した(旧)政府の広報誌たる3K(感情的・狂信的・コドモっぽい)新聞だ。

いくらミンス憎しとは云え、もう少し現実的なハナシをしてほしい。

せめてコームインを攻撃する時に使う、平均年収400万円代の家庭をモデルケェスにするとかさ。

こーゆーのを、ネット上の自称“愛国者”が先の衆院選において、政権交代の原因となったと責任転嫁している“マスゴミの情報操作”と云うモノである。


あぁ、この選挙に関してはもうちょっとちゃんとしたハナシをしたいのだけど、時間がないので、こんな枝葉のハナシでお茶をにごすしかない。

きちんとした総括を、自分の言葉でしたいのだけどなぁ……