考古学蔵書の国外寄贈問題について
日本考古学協会(東京、菊池徹夫会長)が所蔵している遺跡発掘報告書など約5万6千冊の蔵書が英国の研究所に一括寄贈されることになった問題で、協会は16日、兵庫県明石市内で臨時総会を開き、会員に賛否を聞くために投票した結果、反対が上回り、寄贈がいったん凍結されることが決まった。今後、協会員以外の第三者を含めた特別委員会を設けて対応を検討する。
総会では「発掘報告書は失われた遺跡の貴重な記録。知的財産の海外放出は許されない」など会員から反対の声が相次ぎ、投票の結果、賛成922、反対1111となった。
協会関係者によると、すでに英国のセインズベリー日本芸術研究所に蔵書を寄贈する覚書を今年3月に交わしているが、いったん白紙に戻す可能性もあるという。
産経新聞 10月16日(土)15時9分配信
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ちょっと前の記事だけどね。
コレ、どーゆーコトかと云うと、「日本考古学協会」って協会があってね、ソコに全国から研究書や紀要なんかが寄贈されてきたんですよね、何十年も。
先日まで千葉の市川考古博物館に寄託して、閲覧も可能な状況なんですが、その数があまり膨大になってしまって、これ以上の保管は不可能になってしまったらしい。
そこで一括で保管してくれる寄贈先を公募し、その結果応募してきた英国のセインズベリー日本芸術研究所への寄贈が決定したのです。
今年の3月には協会と研究所との間で、覚書もすでにかわされています。
ところが、海外への資料の流出を危惧した会員が、この決定について異議を申し立て、今月に急遽臨時総会が開かれたワケです。
結果は記事のとおり反対多数となりました。
この問題でやはりひっかかるのは、やはり資料が海外へ流出してしまうコトでしょう。
そうなった場合、公開はまず不可能でしょう。
もちろん研究所でも目録を作成して、公開をする予定ですが(資料のデジタル化も検討されてはいますが……)、やはり海外に存在するのであれば、利用は現実的ではないですね。
海外への寄贈というコトは、協会にとっても苦渋の選択だったと思いますし、実際数十年もの間議論されてきたようです。
国内での保管は、これ以上コストとスペェスの関係で不可能です。
その上での結論ですが、それが「海外へはちょっと……」っていう一時的な情緒でくつがえされるのも、おかしなハナシだとも、理解はできます。
受け入れ先のセインズベリー日本芸術研究所も、日本とは縁の深い機関のようです。
ただ万が一でもその研究所の運営が立ちいかなくなった場合、その資料はどうなるのか?
国内ならまだしも、英国で散逸を免れるコトはおそらく不可能でしょう。
一応、ボクも投票しました。
「反対」ってね。
理由としては海外へ資料が行ってしまえば、文化財資料としての公開の役割を果たすコトができないと考えたからです。
いったん決めておいて、反対に投票すんなよって云われるかもしれませんが、自分が入会したころは、ちょうどこの件については方向性が決まってたようで、実際のトコロ、反対するヒトが異議を申し立てるまでは知らなかったぐらいです(言い訳、言い訳)。
ならばどうする?
しかも覚書までかわしてるんだよなぁ……
……さぁ、どうすべ?
確かに代替案は、すぐには思いつかない。
だけどこれらの研究書や報告書は、数十年にわたって日本の研究者や行政の専門家の努力の結晶です(←いやもうホント、みんな命けずってるんよ)。
今はもう記録の中にしかない、貴重な文化遺産です。
何とか最良な方法で、解決できないものかと思うのです。