小山 正編 『バカミスじゃない!? 史上空前のバカミス・アンソロジー』
麗しきバカミスのアンソロジィ。
読んで泣け。
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辻 眞先「長編 異界活人事件」
フグの毒にあたった教授とその愛人。
死んだ先で、自分たちが作家辻 眞先の創りだした作中人物であるコトを知り、彼を殺そうとするオタクを止めようとする。
まずは我が国のミステリ界の重鎮辻 眞先であるが、自分的にはシナリオ作家って印象が強いんですよね。
だから書庫にも、このヒトの作品は確か1冊ぐらいしかないはず。
相変わらずハズされたような内容、あははは。
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山口雅也「半熟卵(ソフトボイルド)にしてくれと探偵(ディック)は言った」
大富豪令嬢の行方を捜す探偵。
娼婦サラの助けをかりて、その所在をつきとめるが……
実に山口雅也的なハナシだけど、ややバカミスとは云いがたいのではないかと思う。
『生ける屍の死』とかの方が、むしろバカミスではないだろうか……?
う~ん、コレは立派なミステリっつーかハァドボイルドだよなぁ?
探偵が○○ってだけで、ソッチ方面って云うのはどうかと思うよ。
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北原尚彦「三人の剥製」
シャーロック・ホームズが依頼を受けた、名門大学ラグビィチィムの名プレイヤの殺害事件。
ワトスンとともにホームズが大学を訪れた時、すでに第二の殺人が発生していた。
剥製に飾られた遺体の謎を、ホームズは喝破する。
……コレもホームズのパスティシュもので、充分通用すんじゃね?
あえてバカミスって云う必要、あんの?
随所で作者のイタズラが光る、オタク心で書かれたカンジ。
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かくたたかひろ「警部補・山倉浩一 あれだけの事件簿」
警部補山倉浩一が活躍しない2編。
素晴らしいの一言!
掌編だけど、まさしくバカミスである。
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戸梶圭太「悪事の清算」
写真小説。
そんだけ。
この作者、好きじゃないからどーでもよい。
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船越百恵「乙女的困惑」
連続する現金強奪事件を追う刑事。
そして、陰部から瓶がとれなくなってしまった老人に遭遇する女子高生茅乃。
両者が錯綜する時、事件は劇的な終局をみる(笑)!
コレもよい。
バカミスのフリをしているが、ちゃんとトリックあるし。
だから決してアホらしいで終わらない。
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烏飼否宇「失敗作」
バカミスの書評家が殺害された。
しかし不思議なコトに、評価されたはずの作品は存在しない。
一体なぜ……?
殺人者の心情が、何となくわかる。
こーゆー殺害動機でやってくれると、シビれてしまうのだ。
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鯨 統一郎「大行進」
……えっと……いっぱいいっぱい探偵が出てきます。
そんでもってぐだぐだハナシをしながら行進します……?
この作者も、自分的には微妙。
このハナシにしても、微妙……
そもそもこーゆー内省的な自己撞着が、えー歳こいたオトナに必要なのか?
世界中の探偵たちを引っ張り出してまでやるコトなのか……?
ま、だからバカミスなのかもしれないけど……やっぱりバカミスってカテゴリに入るのか、コレ?
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霞 流一「BAKABAKAします」
世捨て人のように暮らす伯父の家を訪れた主人公。
ソコには何人かの先客がいた。
そしてその夜、伯父が殺害されるが、伯父には隠された過去があった……
わりかしメジャらしいけど、実はこの作者、読んだコトない。
なかなか、バカミスの大家らしいけど、この作品もやっぱり、う~ん微妙。
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いや~あらためてまとめてみると、意外にバカミスと云ってよいのか……?って作品が多かったですね。
読んで泣けって云ったけど、泣けんわこりゃ、ごめん。
この中では、かくたたかひろと船越百恵がダントツでよかったですね。
その次は烏飼否宇と辻 眞先。
後は、正直微妙。
バカミスって云うからには、もうちょっと突き抜けてもらった方がよかった。
ジャンルは違うが、バカSFを書く火浦 攻(梶尾真治も昔の作品はすごかった)や、いしかわじゅんなんかが書くバカハァドボイルドなんぞはスゴイと思いますね。
おもしろい作品は、どちらかといえばマイナァな方に多いってのも、(いいのか、ンなコト云って……)ちと厳しいというか、さみしい。
やはりメジャだと、こーゆーバカミスは厳しいのか……
ホントは書きたくても、そんなヒマがないとか、書かせてもらえないとか、オトナの事情的に考えてしまう、根性ワルの発掘屋さんでした。