北村 薫著 『ニッポン硬貨の謎』
エラリー・クイーンの未発表の原稿が発見された。
エラリーがかつて日本に来た際にかかわった、幼児連続殺害事件を描いたモノである。
偶然、第3の事件を目撃したエラリーと、案内役の小町奈々子は、これまでの事件との関連性に気がつく。
しかし、奈々子も同じころ、奇妙な謎に直面していた。
そう、ソレは50円玉20枚を千円札に両替するオトコにまつわる、世にも名高い“あの”謎である。
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エラリー・クイーンの未発表の原稿が……って例のノリであるが、コレを北村薫がやったのだから、すごい。
元々、ミステリ研究者でもあった氏が、終始、日本を見るアメリカ人の視点で描き、しかも文中にクイーンの作品についての論まで堂々と展開しているのだから、実に恐れ入ったとしか云いようがありません。
それだけの文学的素養とミステリの造詣の深さがなければ、ムリなハナシでしょう。
内容としては、それほど大したものではなく、秀逸なトリックもないし、刑事の汗を流すような苦労もない。
事件における動機も、どうにも理解できない。
コレははたして、アメリカ人であるエラリーの“眼”で見た事件だからか?
虚と実。
実と虚。
彼の“眼”が見出したモノは、本当にこの事件の真相なのか……?
そう思わせてしまうのが、名手北村薫の腕なのだと思う。
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評価:★★★☆☆
だからといって、無条件でおもしろかったと云うつもりはない。
やはりついてこれるヤツだけついてこいって風だし(本人はそんな性格じゃないと思うけど)。