アンドレ・ジッド著 『狭き門』
少年ジェロームは歳上の従姉妹アリサと、深く繋がりあう恋をしますが、しかしなぜかアリサは彼と幸せを共有することを拒みつづけます。
幾度となくジェロームはアリサを求めますが、ついに絶望的な別れに直面します。
やがて彼女の妹からアリサの病死が報され、生前つけていた日記が届けられます。
その日記には、ジェロームへの想いを切々と吐露しつつも、彼を拒絶しようとする矛盾の苦悩が激しく書き綴られていたのでした。
* * *
もうほとんど全編、ジェロームが延々とアリサへの想いを語る物語。
彼女への想いは、世俗的なものとは一線を画していますけど、感応しつつもなぜかそれを受け入れるコトをしないアリサ。
う~ん……読みそこなったのかもしれないけど、どうしてもアリサがジェロームを拒む理由がわからない。
いやまぁ、大体読み解けるけどさ、やはりギリギリのトコロで理解できない。
つーかアリサは自分の信念に生きるコトができたけどさ、ジェロームはどうなるのさ。
アリサを失って、その後も結局誰愛するコトができなくなってしまう。
読むかぎり、アリサもまたジェロームに対して深い愛情を持っています。
にも関わらず、彼を拒む。
ある時は妹がジェロームを愛しているコトを盾に、ある時は父の生活を盾に。
なぜだろう?
克己か?自己犠牲か?美徳か?
何を尊び、彼を拒んでいるのだろうか……?
しかし彼女は、そのコトに何も喜びを見出してはいません。
ただ束縛するだけです。
彼女は確かにジェロームを愛していた。
けれど彼女が共に歩みたいと切望していた路は、2人には狭すぎると苦悩するのです。
しかしそれは歩むべき路が狭いのではないと思います。
彼女の信じるモノが、彼女の路を狭くしたのです。
くぐりたいと願った門を狭くしたのです。
それがおそらく、彼女の不幸であって、ジェロームを受け入れるコトができなかったコトが不幸なのではないと思うのです。
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評価:★★★★★
それでも傑作。
すばらしい。
ある意味、悲恋ではあるが、美しい。